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気温1.5度上昇、リスク切迫 IPCC「50年排出ゼロ必須」

気温1.5度上昇、リスク切迫 IPCC「50年排出ゼロ必須」

2021-08-10

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が9日公表した報告書は、切迫する温暖化のリスクを世界につきつけた。気温上昇の加速で熱波や干ばつ、豪雨が頻発するようになる。温暖化ガス削減などの対応が遅れるほど影響は増大しかねない。一定の気温上昇を前提にした環境への適応策も重要になる。


21世紀に入り、新興国や途上国の経済成長と合わせ温暖化ガスの排出は急増している。気温はこれまで約1度上昇した。

既に影響は出ている。顕著なのは山火事だ。20年に大きな被害が出た米カリフォルニア州のほかロシアやカナダ、トルコ南西部などでも相次ぐ。


太陽光発電


永久凍土が溶けて地中のガスや細菌が放出されるリスクもある。IPCCによると、北極圏は他の地域の2倍超のペースで温暖化が進む。シベリアの2016月の平均気温は、19812010年の同期間の平均より5度以上高かった。


熱波による死者も増えている。医学誌ランセットによれば、00年から18年にかけて65歳以上の人が暑さの影響で死亡する確率は55%増加した。国際労働機関(ILO)もフルタイムで働く8000万人分の労働力を「熱ストレス」で30年までに失うと分析する。経済損失は24千億ドル(約250兆円)に及ぶ。


農業や建設業は屋外で働けなくなったり、作業のスピードが著しく鈍ったりする。空調が不十分な工場でも仕事がはかどらなくなる。8日に閉会した東京五輪でも高温を理由に競技時間がたびたび変更された。


水害も拡大する。IPCCは気温が1.5度上がった場合、海面上昇や台風で世界の14千万人が浸水などの被害を受けると予想する。防波堤の強化や沿岸部からの移住が必要になる。


IPCCは、化石燃料の削減など抜本的な対策をとらない場合、気温は21世紀末に最大5.7度も上昇すると試算した。影響はさらに深刻になりかねない。


報告書は「2050年ごろに二酸化炭素(CO2)と他の温暖化ガス排出量を大幅に削減してネットゼロにしない限り、21世紀中に1.5度と2度の両方を超える」と明記した。実質排出ゼロにできれば、1.5度以内に抑える目標は達成できるとみる。大気中に放出済みの温暖化ガスを考慮すると、前段階として30年時点で10年比45%の削減も必要と指摘した。


世界の足並みはそろっていない。50年排出ゼロの目標で一致しているのは日米欧などの先進国が中心。その狙い通り削減が進むかも見通せない。日本は30年度に13年度比で46%減と掲げた。実際は具体策に乏しく、数字合わせの面がある。


報告書は「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と強調した。国や企業にとって気候変動対策はますます重い責務になる。

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