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新築住宅への「太陽光義務化」、議論スタート、賛否両論に

新築住宅への「太陽光義務化」、議論スタート、賛否両論に

2021-04-29

国土交通省は4月19日、第1回「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を開催した。「2050年カーボンニュートラル」実現に向けて、新築住宅などへの太陽光パネル設置義務化などについて議論した。

 同検討会は、脱炭素化に向けた住宅・建築物におけるハード・ソフト両面の取り組みと施策の方向性を関係者に幅広く議論することを目的としたもの。第1回は、現状報告と論点を確認し、参加者それぞれの立場から自由に意見を述べた。

 新築住宅などへの太陽光パネル設置義務化について、鳥取県の平井伸治知事は「現場から見たら、何を言っているのか」と反対の立場を表明した。平井知事によると、最近の政府の制度は、太陽光発電を住宅に設置できない仕組みになっていると指摘。例えば、固定価格買取制度(FIT)の買取単価は割が合わないほど低下しており、自家消費向けに蓄電池を導入するといった思い切った助成制度が必要とした。

 また、同県を含む積雪地帯では屋根上に太陽光パネルを設置すること自体が難しく、積雪寒冷地に対して上乗せ助成をするといった施策がない限り普及が進まないのではないかとの懸念を示した。このほかにも、昼間の余剰電力を十分活用できない電気料金体系の見直しも必要と指摘し、一律の義務化は乱暴な議論なのではないかと述べた。

 主婦連合会の有田芳子会長も、早々な設置義務化は難しいとの認識を示した。安価とはいえないイニシャルの原資をどうするのかを課題に挙げた。また、住宅価格の年収倍率が上がってきている状況で、設置した場合の投資回収が現状見込めないなかでは、住宅取得にも影響が出るのではないかと懸念する。設置義務化の前に、ZEB・ZEHへの誘導と並行して設置への環境づくりを行っていき、消費者自らが設置の選択をするように促すべきではないかと述べた。

 一方、京都大学の諸富徹教授は「是非やるべき」と、積極的に賛成した。再エネの飛躍的な拡大は今後の日本の脱炭素化に不可避であり、住宅屋根への設置は重要なポテンシャルを持つと指摘。そのポテンシャルを生かすには、消費者の選択を待つのではなく義務付けが必要とした。

 平井知事が指摘するFITでは採算が取れなくなっているという課題に対しては、FITに頼らないビジネスモデルとして自家消費モデルへの切り替えを提案。また、事業者側の初期負担で設備を設置するオンサイトPPA(電力購入契約)モデルといった新しいビジネスモデルを普及させることで、過度なコストを負担させることなく太陽光パネルの設置を義務付けることが可能とした。

 東北芸術工科大学の竹内昌義教授も、日当たりの悪いところへの例外措置はあるにせよ、少なくとも義務化はしていくべきと述べた。太陽光発電の利点として、夏の電力需要のピーク時に最も効果を発揮するため、自家消費できるような形であれば全体の電気の需要に対する平準化もできる点を挙げた。


屋根条件でリスクも

 慶應義塾大学の小山剛教授は「大変に意欲的」と評価する一方で、丁寧な制度設計が必要と指摘した。故障した場合や発電効率など技術が進歩した場合のリプレース費用、地域差による発電効率といったさまざまな違いをどうやって具体的に反映させていくかによって説得力が変わり、その判断を誤ると個人に過剰な負担を課すことになると述べた。

 横浜市建築局の鈴木和宏局長(平原敏英副市長の代理として出席)は、大きなトレンドの流れとしては理解できるとした一方で、高度利用が進む市街地では日当たりの確保に課題のある地域もあるため、対象エリアの限定も必要かもしれないとの見解を示した。また、エンドユーザーの費用負担に対する支援も課題に挙げた。

 東京大学の清家剛教授は、現在は日当たりなど住宅屋根の条件ごとに発電量が異なるリスクを個人が負担しており、一律義務化ではそのリスクが大きな問題になると指摘。個人のリスクを軽減するには、エネルギー事業者による屋根借りとしたり、エリア単位で発電して日射量の多寡に関わらず一律の電気料金とするなど、従来と異なるより効率的なやり方があるのではないかと提案した。

 このほかにも同検討会では、4月1日に施行された改正建築物省エネ法を踏まえた、住宅や建築物の省エネ対策の強化に向けた規制的措置や誘導的措置のあり方などについてなどを議論した。同改正法では、中規模オフィスビルなどへの基準適合義務の対象範囲拡大、戸建住宅などの設計者から建築主への省エネ基準への適合の可否などを評価・説明することなどを義務付けた。

 さらに、経済産業省が2015年12月にとりまとめたZEHの定義では、省エネ基準から断熱基準や設備などの高効率化を20%向上するとともに、太陽光発電などによる創エネで一次エネルギー消費量を正味ゼロ以下と定める。高断熱基準の外皮平均熱貫流率(UA値)は、省エネ基準が0.46~0.87に対し、ZEH基準では0.4~0.6に向上した。経済産業省・国土交通省・環境省が連携して、2030年までに建売住宅や集合住宅を含む新築住宅の平均でZEHの実現を目指している。

 一方、こうした国の取り組みについて平井知事は、なかなか普及が進んでいないと指摘した。鳥取県では、2020年1月に独自の住宅再エネ基準「とっとり健康省エネ住宅(NE-ST)」を策定。行政主導ではなく、県内実務者が検討に加わることで実現可能な高い性能基準を定めることができたとしている。

 NE-STでは、冷暖房費を抑えるために必要な最低限レベル(T-G1)でUA値0.48、経済的で快適に生活できる推奨レベル(T-G2)で0.34、優れた快適性を有する最高レベル(T-G3)で0.23と、ZEHを上回る性能基準を設けた。平井知事によると、今の欧米諸国はT-G2のレベルで義務化されており、日本の省エネ基準での努力義務は立ち遅れているという。


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