経済産業省は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)における2021年度の買取価格・賦課金単価等を決定しました。 1.2021年度の買取価格 調達価格等算定委員会の「令和3年度以降の調達価格等に関する意見」を尊重し、以下の赤字箇所のとおり決定しました。 (1)太陽光発電 ①住宅用太陽光発電(10kW未満) 電源 規模 (参考)2020年度 2021年度 住宅用太陽光発電 10kW未満 21円 19円 ②事業用太陽光発電(10kW以上50kW未満) 電源 規模 (参考)2020年度 2021年度 事業用太陽光発電 10kW以上 50kW未満 13円+税 12円+税 (※)2020年度から、自家消費型の地域活用要件が設定されています。 ③事業用太陽光(50kW以上250kW未満) 電源 規模 (参考)2020年度 2021年度 事業用太陽光発電 50kW以上 250kW未満 12円+税 11円+税 ④事業用太陽光(250kW以上) 2021年度の買取価格は、入札により決定します。2021年度の入札回数は4回です。上限価格は、それぞれ、11.00円(第8回)、10.75円(第9回)、10.50円(第10回)、10.25円(第11回)です。 (※)括弧内の回数は通算回数です。 (2)風力発電 ①陸上風力発電(250kW未満) 電源 規模 (参考)2020年度 2021年度 陸上風力発電 250kW未満 18円+税 17円+税 ②陸上風力発電(250kW以上) 2021年度の買取価格は、入札により決定します。2021年度の入札回数は1回です。上限価格は、17.00円です。 ③陸上風力発電(リプレース) 電源 規模 (参考)2020年度 2021年度 陸上風力発電 (リプレース) 全規模 16円+税 15円+税 ④着床式洋上風力発電 電源 規模 (参考)2020年度 2021年度 着床式洋上風力発電 全規模 入札 32円+税 ⑤浮体式洋上風力発電 電源 規模 (参考)2020年度 2021年度 浮体式洋上風力発電 全規模 36円+税 36円+税 (3)一般木材等バイオマス発電・バイオマス液体燃料 ①一般木材等バイオマス発電(10,000kW未満) 電源 規模 (参考)2020年度 2021年度 バイオマス発電 (一般木材等) 10,000kW未満 24円+税 24円+税 ②一般木材等バイオマス発電(10,000kW以上)・バイオマス液体燃料(全規模) 2021年度の買取価格は、入札により決定します。上限価格は非公表です。 (参考)上記以外の買取価格について 上記以外の買取価格については、以下のとおり、これまでに決定しています。 (1)地熱発電 電源 規模 (参考)2020年度 (参考)2021年度 地熱発電 15,000kW未満 40円+税 地熱発電 15,000kW以上 26円+税 地熱発電 (全設備更新型リプレース) 15,000kW未満 30円+税 地熱発電 (全設備更新型リプレース) 15,000kW以上 20円+税 地熱発電 (地下設備流用型リプレース) 15,000kW未満 19円+税 地熱発電 (地下設備流用型リプレース) 15,000kW以上 12円+税 (2)中小水力発電 電源 規模 (参考)2020年度 (参考)2021年度 中小水力発電 200kW未満 34円+税 中小水力発電 200kW以上 1,000kW未満 29円+税 中小水力発電 1,000kW以上 5,000kW未満 27円+税 中小水力発電 5,000kW以上 30,000kW未満 20円+税 中小水力発電 (既設導水路活用型) 200kW未満 25円+税 中小水力発電 (既設導水路活用型) 200kW以上 1,000kW未満 21円+税 中小水力発電 (既設導水路活用型) 1,000kW以上 5,000kW未満 15円+税 中小水力発電 (既設導水路活用型) 5,000kW以上 30,000kW未満 12円+税 (3)バイオマス発電(一般木材等バイオマス発電・バイオマス液体燃料以外) 電源 規模 (参考)2020年度 (参考)2021年度 バイオマス発電 (メタン発酵バイオガス) 全規模 39円+税 バイオマス発電 (未利用材) 2,000kW未満 40円+税 2,000kW以上 32円+税 バイオマス (建設資材廃棄物) 全規模 13円+税 バイオマス (一般廃棄物・その他) 全規模 17円+税 2.2021年度の賦課金単価 1.の買取価格を踏まえて算定した結果、2021年度の賦課金単価は、1kWh当たり3.36円と決定しました。目安として一ヶ月の電力使用量が260kWhの需要家モデルの負担額を見ると年額10,476円、月額873円となります。 なお、2021年度の賦課金単価は、2021年5月検針分の電気料金から2022年4月検針分の電気料金まで適用されます。...
続きを読むシン・エナジーとタカミヤと共同でソーラーカーポートを共同開発。太陽光発電設備は施工側(シン・エナジー)の所有とする「PPAモデル(第三者所有モデル)」で導入するため、ユーザー側は初期費用なしで設置できる。 2020年10月13日 16時00分 公開 [スマートジャパン] シン・エナジーは2020年9月、タカミヤと共同で、自家消費型ソーラーカーポート(駐車場屋根置き太陽光発電)を開発したと発表した。タカミヤのマザー工場である群馬工場に設置し、シン・エナジーが太陽電池モジュールを搭載した。 ソーラーカーポートの構造は、タカミヤがこれまでに太陽光架台やさまざまな構造部材を設計・開発したノウハウを生かし、高強度かつ低コストな鉄骨造を採用。一般的なカーポートと異なり、屋根葺材(金属鋼板)の代わりに太陽電池モジュールをそのまま載せる構造で、公共施設、商業施設、工場から家庭まで幅広く発電設備の設置が可能としている。 既に建物屋根にパネルを設置済みでも、また屋根の強度が不足していても設置できるのが特徴。太陽光発電設備は施工側(シン・エナジー)の所有とする「PPAモデル(第三者所有モデル)」で導入するため、ユーザー側は初期費用なしで設置できる。一定期間が経過した後は、希望により設備を無償で受け取ることも可能だ。 今回、まずタカミヤの群馬工場に建設し、シン・エナジーが太陽電池モジュールを搭載した。太陽電池モジュールのサイズは駐車車両4台分(2台分×2連棟)で、JAソーラー製の30枚のモジュールを設置した。発電出力(モジュールベース)は345Wで、設備容量は10.35kW(駐車車両20台分:約50kW、40台分:約100kW、80台分:約200kW)である。 なお、今回開発したソーラーカーポートは、事業所もしくは公共施設などの駐車場への設置向けで、一般家庭向け(小規模低圧案件)ではないとしている。
続きを読む日本アジア投資は、同社グループが投資する3つのメガソーラーが売電を開始したと発表した。 2020年05月08日 07時00分 公開 [スマートジャパン] 日本アジア投資は2020年4月12日、同社グループが投資するメガソーラープロジェクト3件が完成し、売電を開始したと発表した。紋別市弘道太陽光発電所(北海道紋別市)、広野ソーラーパーク(福島県双葉郡広野町)、横津の丘太陽光発電所(北海道亀田群七飯町)の3カ所である。 紋別市弘道太陽光発電所は、最大出力が15.7MW、予想発電電力量が年間約1万8993MWh(メガワット時)。売電開始は2020年2月。買取価格(FIT)は40円/kWh(税抜き)である。同発電所は、スマートソーラーとの共同投資案件となる。出力変動タ対策として蓄電システムを導入した他、パネルの設置角度を最大20度まで調整可能な3次元架台を使用。また、パネル表面への積雪回避のため、パネルを高い位置に急な傾斜角度で設置している。 広野ソーラーパークは、最大出力が2.7MW、予想発電電力量が年間約3290MWh。売電開始は2020年2月。買取価格(FIT)は40円/kWh(税抜き)。スマートソーラーとの共同投資案件である。採石場跡地を有効利用した、災害復興における地域のインフラ整備の一環として位置付けられた発電所である。 横津の丘太陽光発電所は、最大出力が2.0MW、予想発電電力量が年間約2301MWh。売電開始は2020年3月からである。買取価格(FIT)は36円/kWh(税抜き)。閉鎖された旧函館カントリークラブ横津ゴルフコース跡地を活用したメガソーラーだ。
続きを読む長崎県佐世保市の離島「宇久島」で計画されている超大型480MWのメガソーラープロジェクト。プロジェクトの行く末に大きな関心が集まっていたが、着工に向けて大きく前進したようだ。 2020年05月07日 07時00分 公開 京セラ、九電工、東京センチュリー、古河電気工業、坪井工業らは2020年4月28日、長崎県佐世保市宇久島における営農併設型太陽光発電の建設に向け、特定目的会社(SPC)である宇久島みらいエネルギーホールディングス合同会社に約500億円を出資する契約を締結したと発表した。 この計画は佐世保市の離島である宇久島に、合計165万枚の太陽光パネルを設置し、総出力は480MW(メガワット)という超大型メガソーラーの建設を目指すプロジェクト。一般的な太陽光発電設備と、太陽光パネルの下で農作物を栽培する営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を組み合わせるハイブリッド型のプロジェクトで、年間発電量は一般家庭17万世帯以上の使用電力量に相当する約51.5万MWhを見込んでいる。太陽光発電所で発電した電力は、宇久島と本土との間に約64kmの海底ケーブルを敷設し、九州電力に売電する。 当初このプロジェクトはドイツの太陽光発電開発会社であるフォトボルト・デベロップメント・パートナーズ(PVDP)が主導していたが、後に撤退が決定。九電工や京セラが主導する新たな体制でのプロジェクト継続が決定していたが、許認可の関係などにより、着工開始が遅れていた。また、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」の制度改正が行われ、スケジュールの遅延度合いによっては電力の買取単価が減額となり、事業性がいちじるしく低下するという可能性もあり、注目が集まっていた。 この宇久島のプロジェクトは2012年度にFITの認定を取得しているため、買取単価は40円/kWh。ただし、上述したFITの制度改正によって、この権利は2020年8月中に着工できなければ失効し、買取単価は半分程度になってしまう。総投資額2000億円のプロジェクトであり、8月中の着工は必須だ。 今回のSPCへの500億円出資は「プロジェクトの事業性を確認できたため」としており、完成すれば国内最大級となる発電所の8月中の着工に向け大きく前進したようだ。
続きを読むJXTGホールディングスは3月27日、農作物の自動収穫ロボット開発に取り組むベンチャー企業のAGRIST(宮崎県新富町)に出資したと発表した。ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)と組み合わせ、再生可能エネルギーの普及と農業の課題解決を両立させるモデルの構築を目指す。 AGRISTが開発する農作物収穫ロボットのプロトタイプ (出所:AGRIST) AGRISTが開発する農作物収穫ロボットのプロトタイプ (出所:AGRIST) 100%投資子会社のJXTGイノベーションパートナーズ合同会社を通じて、AGRISTに1億円を出資する(出資比率は非公表)。今後、両社共同で実行計画を策定し、2020年夏をめどに設備の開発・実証を行っていく。 AGRISTは、農業従事者の高齢化や人手不足に伴う地方の衰退といった問題の解決を目指して、2019年10月に設立した。農作物収穫ロボットは、AIと画像認識技術を活用して果実を認識して収穫するもので、将来的には病気や不良の予知も実現するという。 JXTGホールディングスは、2019年8月にソーラーシェアリングのコンサルティングから建設・運営まで手掛けるアグリツリー(福岡県那珂川市)に約500万円を出資し、各地でソーラーシェアリングの導入に向けて検討を進めている。 今回のAGRISTとの協業により、発電と農業を組み合わせることで、2019年5月に発表した「2040年JXTGグループ長期ビジョン」で掲げた目標のひとつ「低炭素・循環型社会への貢献」に向けて積極的に取り組んでいくとしている。
続きを読む画像はイメージです 経済産業省は3月23日、固定価格買取制度(FIT制度)における2020年度の買取価格・賦課金単価などを決定し公表した。2020年度に電気料金の一部として、電気の使用量に応じて需要家が負担する賦課金単価は2.98円/kWh。家庭の平均モデル(使用量260kWh)の負担額でみると、年額9,288円、月額774円。2019年度比で年額84円、月額7円の負担増となる。 2020年度 2019年度 賦課金単価(1kWh当たり) 2.98円 2.95円 家庭の平均モデル(使用量260kWh)の負担額 月額774円 月額767円 2020年度と2019年度の賦課金 2020年度の買取価格は、調達価格等算定委員会の「令和2年度の調達価格等に関する意見」を尊重し、委員長案で決定した。 太陽光(50kW以上250kW未満)は12/kWh、250kW以上は入札 2020年度の買取価格(太陽光) 事業用太陽光発電の買取価格は、10kW以上50kW未満を13円/kWh、50kW以上250kW未満を12/kWh。250kW以上は入札により買取価格を決定する。 10kW以上50kW未満には、2020年度から、自家消費型(余剰売電)で災害時に活用可能であること等を認定要件とする「自家消費型の地域活用要件」を設定する。 住宅用太陽光発電(10kW未満)の買取価格は21/kWh。 着床式洋上風力発電の買取価格は、入札により決定する。 一般木材等バイオマス発電(10,000kW未満)は、2019年度の買取価格を据え置き24円/kWh。一般木材等バイオマス発電(10,000kW以上)・バイオマス液体燃料(全規模)の買取価格は、入札により決定する。このほかの買取価格については、これまでに決定している。 買取価格を踏まえて賦課金単価を決定 2020年度の電気料金における賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)単価は、これら買取価格を踏まえて算定し決定した。2020年度の賦課金単価は、2020年5月検針分の電気料金から2021年4月検針分の電気料金まで適用される。 (出所:経済産業所) 2022年度から「地域活用要件」の対象を拡大 「令和2年度の調達価格等に関する意見」では、10kW以上50kW未満(事業用太陽光発電)に設定する「自家消費型の地域活用要件」について、2020年度のFIT認定時の自家消費計画や運転開始後の取締りで求める「自家消費比率」30%以上を要件として認定することなどが盛り込まれている。 また、地域に賦存するエネルギー資源を活用できる小規模地熱発電・小水力発電・バイオマス発電については、2022年度より、災害時のレジリエンス(減災・防災の強靭性)強化に資することを認定要件とする「地域一体型の地域活用要件」を設定することしている。また、それまでの間は推奨事項とすることとしている。 委員長案で示された、この地域活用要件を求める可能性がある規模は、地熱が2MW未満、小水力は1MW未満、バイオマス発電は10MW未満。これらの対象となる電源の開発を予定している事業者は、必要な対応について情報を収集し、準備をしておく必要がある。...
続きを読む太陽光発電システムの長期耐久性を高め、安全を確保するための「設計ガイドライン」が2年ぶりに改訂された。「PV2019太陽光発電フォーラム」で行われた構造耐力評価機構・高森氏の講演をもとに、生まれ変わった設計ガイドラインのポイントを整理する。 2019年07月29日 07時00分 公開 [廣町公則,スマートジャパン] 太陽光発電の安全性向上に向けて、架台の設計に関する「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン2019年版」が2019年7月9日に公開された。設計ガイドラインの策定はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトの一環として2016年にスタートし、太陽光発電協会と奥地建産が受託事業者として参画するかたちで、翌年「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン2017年版」としてまとめられた。今回発表された2019年版はこれを改訂したもので、架台や基礎の強度、腐食進行などに関する実証試験結果を反映させるとともに、太陽光発電の安全性に対する社会的関心の高まりを受け、2017年版にはなかった要素も多数盛り込まれることとなった。 50年に1度の災害を設計のベースに はじめに高森氏は、設計ガイドラインにおける構造設計は「許容応力度設計」に基づいているとして、十分な余裕をもって設計することが重要であると話す。許容応力度設計とは、設計荷重レベルの荷重を受けても元に戻ることを基本とするもので、部材が破壊する荷重(最大荷重)を基にするものではない。さらに、50年に1度程度のまれに起こる大規模な地震・暴風・大雪を想定して、許容応力度設計を行わなければならず「これまで被害がなかったから大丈夫」などという発想ではいけないと説く。 「PV2019太陽光発電フォーラム」(主催:太陽光発電協会主催、会場:パシフィコ横浜)において、設計ガイドライン改訂作業の事務局を務めた構造耐力評価機構の理事・高森浩治氏が、2019年版について解説した。2019年版は8章からなり、主な改訂内容は「5章 使用材料」の新設、および「6章 架台の設計」「7章 基礎の設計」「8章 腐食防食」の全面的な更新だ。全体のボリュームは、2017年版の1.5倍にも及ぶという。また、構造設計に有用な情報提供を目的に、「技術資料」や「設計例」の充実も図られた。 アルミ架台の導入に指針与える 新設された章である「使用材料」においては、従来前提とされていた鋼材に加え、アルミニウム合金材やコンクリートについても記された。アルミニウム合金材に関しては、「使用される目的・部位・環境条件・耐久性等を考慮して適切に選定する」とともに、材質・形状・寸法は原則として「アルミニウム建築 構造設計基準・同解説」(アルミニウム建築構造協議会)に従うことが求められている。ただし、海外からの輸入材は、この基準に合わない場合もあるので、強度特性や耐久性を十分に確認した上で使用しなければならないという。 続く「架台の設計」では、安定構造を実現するためのポイントを整理する。基礎については、柱脚部に作用する水平力によって杭頭部に変位が生じ、この変位により上部の架台やアレイが損傷するケースがあることを指摘。架台の実情を反映したモデルを使って構造解析を行い、各部材および接合部の剛性を適切に評価することが重要であり、特に杭基礎の場合は杭の変位に考慮した上部構造のモデル化を行うことが推奨される。 アルミニウム合金製架台においては、「構造耐力上の主要な部分に用いるアルミの板圧は1mm以上」とされる。熱処理によって強度を高めたアルミニウム合金の場合は、「脆(ぜい)性的に破壊しやすくなる傾向」にあるので、部材断面に余裕を持たせることが望ましいとのこと。また、溶接をする場合や「鋼材に比べて支圧強度が低い」場合は、「母材と溶接影響部では許容応力度が異なる」ことに留意する必要もある。 傾斜地ならではの荷重にも注意喚起 「基礎の設計」では、基礎のタイプを直接基礎(独立基礎・連続基礎・べた基礎・地盤改良工法)、杭基礎(支持杭・摩擦杭・杭状補強)に分類し、それぞれに指針を示す。2019年版では、新たに「杭基礎設計における水平抵抗力および水平変位」などについても詳述されている。例えば、「地表面変位が0.1D以上あるいは1cm以上変位すると予想される場合は、水平変位が予想される変位を超えるまで載荷することが望ましい。この時、短期荷重条件による水平変位によって、架台部材、接合部、杭頭接合部などが、許容応力度以下であること、杭体は腐食しろを除いた有効断面で許容応力度以下であることを確認する」ことが必要であるとする。また、「強風時の負圧による引き抜き力に特に留意」して設計を行わなければならないと指摘する。 強風対策は、設計ガイドラインが一貫して重視しているテーマの一つだが、2019年版では「傾斜地での風速増加」についても注意を促す。山の斜面など傾斜地に設置された太陽光発電設備において、斜面の途中と登りきったところでは受ける風圧が変わってくる。風が下から吹き上がってくるときに速度が増し、斜面の上に行くほど風圧もアップしているのだ。高森氏は、「例えば、15度ほどの傾斜の場合、風速は2割くらい早くなります。風速が2割増加するということは、荷重はその2乗に比例するので、4割増加することになります。設計上想定していた荷重の1.4倍がかかるわけですから、斜面を登り切ったところで被害が起きるケースも出ている」と話す。 「一般には、風圧荷重が大きい地域では架台の傾斜角を低くする、つまり水平に近くしてやると荷重が下がる。逆に、雪の多い地域では架台の傾斜角を大きくすることで、積雪を減らし、荷重を下げることができる。こうした基本を踏まえつつ、それぞれの設置環境に合わせた設計をしていくことが大切なのです」(高森氏) 正しい設計で長期安定運用を 「腐食防食」に関しては、架台に雨がかからないことから生じる悪影響に注意を促す。架台は、太陽光パネルが屋根となるため直接雨に打たれることは少ないが、雨がかからないことで、かえって腐食が進んでしまうこともあるという。通常、雨は材料表面をぬらし、腐食を促進する(均一腐食)が、環境によっては大気汚染物質(飛来塩分や工場の排ガスなど)を洗い流し、腐食を抑制する効果もある。同様に、雨がかからないことで、大気汚染物質が架台表面に蓄積し、腐食が促進されてしまうことも考えられる。暴露試験の結果からもこのことは明らかであり、腐食を抑制するためには、「周辺環境を考慮した適切な材料を選び、有効な防食処理を施して使用することが必要である」と結論づける。 腐食対策は、メンテナンスを考えることに直結する。「課題は長期耐久性です。設計のときにしっかり考えておかないと、後で大変なことになりかねません。もし、杭が土中で想定以上に錆(さ)びたら、メンテナンスもできなくなってしまいます」(高森氏) 法の基準はあまでも最低基準にすぎない、と高森氏は続ける。「時間が経てば性能は下がって...
続きを読む経済産業省は7月12日、新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ(WG)の会合を開き、事業用低圧太陽光の技術基準の見直しなどに関して議論し、「仕様規定化」「土砂流出の防止」に関して、具体的な法規制の改正案を示した。 同WGでは、これまでの会合で、連系出力50kW未満の事業用低圧案件のなかに、安全上、必要な性能を満たしていないケースがあることが指摘され、その対応の方向性として、部材・設計・設置方法などの「仕様」を定め、それを原則化することを検討してきた。 これを受け、12日の会合では、「電気設備の技術基準の解釈」(電技解釈)に関し、2つのテーマでの改正案が示された。1つは、新たにアルミニウム合金製架台の仕様を例示し、これを「規定化」した。もう1つは、新たに「敷地の土砂流出などを防止する措置を講ずること」を条文に盛り込む。 具体的には、第46条第3項にアルミ架台の仕様を例示し、第200条第2項第二号で、第46条第3項に従って施設することを規定する。これにより、実質的な「仕様規定化」となる。ただ、電技解釈前文の規定により、「第46条第3項と同等以上の保安水準を確保できる明確な技術的根拠があれば、同項に従わない設計を否定するものではない」としている。 「土砂流出の防止」に関しては、「土地に自立して施設される太陽電池発電設備の支持物の施設による土砂の流出または崩壊を防止する措置を講じること」との条文を新設する。具体的な条文の追加場所は今後、検討するとしている。こちらに関しては、サイトごとに状況が大きく異なるため、排水溝や調整池の設置、法面へのコンクリート吹き付けなど、適用する手法や技術については、事業者の判断に任せることになる。 会合で示した改正案に関して、委員から了承を得られたことから、経産省では、今後、パブリックコメントを経て、改正の手続きを進めたいとしている(関連記事:経産省、事業用低圧太陽光を「立ち入り検査」、今後、改善命令も)。
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