日本のメダルラッシュに沸く東京五輪は環境への配慮が未来へのレガシー(遺産)として残される大会だ。日本の得意分野ともいえる水素関連やリサイクル関連で、大会スポンサーのトヨタ自動車やアシックスなどが最新の技術を提供。東京大会に伴う二酸化炭素(CO2)排出量は実質ゼロとなる。世界中で脱炭素化への関心が高まる中、東京大会は環境問題への対応を重視した大規模イベント開催の新しい姿を描く。 東京五輪の環境分野における理念の象徴のひとつが、23日の開会式の最後に五輪史上初めて水素によってともされた聖火だ。 燃焼時にCO2を排出しない水素は酸素と反応させて発電する燃料電池にも利用できる。太陽光発電の電力を使って福島県浪江町で製造された水素などをENEOSが東京大会向けに供給し、東日本大震災からの復興と脱炭素社会の実現をアピールする。 今回の五輪ではエコカーも積極的に活用される。トヨタは公式車両3340台を提供。このうち9割は燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)などの電動車が占める。選手村では自動運転もできるEV「e―Palette(イーパレット)」17台を使った24時間の移動サービスも提供している。 循環型社会の到来を見据えたリサイクルの取り組みも活発だ。日本選手団の公式ウエアを担当したアシックスは着古したスポーツウエアから生み出した繊維を活用し、「リサイクル繊維の比率はジャケットで約50%、シューズの上部や中敷きの表部分では100%を占める」という。 ほかにもプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&Gジャパン)などは、約100台の表彰台を廃プラスチックで製作。選手に贈られるメダルの材料は、小型家電などの「都市鉱山」から集められた。 五輪と環境問題をめぐっては、スイスなどの国際研究チームが4月、1992年以降の夏季・冬季五輪16大会の持続可能性に関する評価を発表。近年の五輪ほど評価が低くなる傾向があると指摘した。しかし東京五輪への評価は2016年のリオデジャネイロ五輪より高く、12年のロンドン五輪と同水準で、会場の新規建設などが比較的少ないことなどが評価されている。 東京五輪・パラリンピック組織委員会は6月、東京大会開催に伴い発生する273万トンのCO2は東京都と埼玉県から無償提供される438万トンの排出枠で相殺されると発表。目標としてきたCO2排出実質ゼロが達成できる見込みだ。 トヨタの伊藤正章オリンピック・パラリンピック部長は「(自社などの取り組みが)環境負荷軽減に貢献し、CO2排出量もこれまでで最も低い数値になるだろう」と大会成功に自信を示す。(井田通人、宇野貴文)...
続きを読む三井物産プラントシステム(東京都港区)は7月19日、食品トレー容器製造を手掛けるエフピコとオンサイト型PPA(電力購入契約)を締結したと発表した。茨城県八千代町にある関東八千代工場と関東エコペット工場の屋根上に太陽光発電設備を設置する。 関東エコペット工場に設置する太陽光パネルの出力は約1.4MW、年間発電量は149万kWhを見込む。CO2削減効果は年間で約660tの見込み。関東八千代工場に設置する太陽光パネルの出力は約1.5MW、年間発電量は164万kWh飲み込み。CO2削減効果は年間730tの見込み。 エフピコの関東エコペット工場、関東八千代工場、関東リサイクル工場 (出所:エフピコ) 三井物産プラントシステムは、発電した電力はエフピコに全量売電する。エフピコは、同敷地内にある関東リサイクル工場で使用する電力の全量相当の再生可能エネルギーを調達可能になる。2022年3月期に稼働する予定。 両社は今後、エフピコの他拠点(中部エリア・関西エリア)の太陽光発電についても、2023年3月期の導入を検討する。三井物産プラントシステムは、これまでに累計約307MWの太陽光発電所を全国で開発・運営管理しており、この実績を活用してオンサイト型PPAやオフサイト型PPAの開発を進めている。
続きを読む太陽光発電設備(出所:マツダ) マツダ(広島県府中町)は7月13日、製造領域での工場やオフィスのグリーン化推進の一環として、広島本社工場で、同社初となる太陽光発電設備の稼働を開始した。発電能力は1.1MW。同工場で生産するすべての「MX-30 EV モデル」のバッテリー充電をまかなうと共に、工場全体で使用する電力としても供給される。 同社は「今後もグリーン電力の積極的な導入と利用促進を行い、2050年のカーボンニュートラル化に向け着実に挑戦を進め、豊かで美しい地球と永続的に共存できる未来を目指していく」とコメントした。 「MX-30 EV モデル」は同社初の量産電気自動車。バッテリーは、LCA評価によるCO2排出量を抑えることと、買い物や通勤など日常生活でのユーザーの実用的な使用環境に見合った走行距離を考慮し、総電力量35.5kWhとした。 また、同社が6月に発表した新たな技術・商品の開発方針では、2030年時点での生産における電動化比率は100%、EV比率は25%を想定していることを明らかにした。
続きを読む富士経済(東京都中央区)は6月24日、2035年度の再生可能エネルギー発電システム市場は1兆7651億円になるとの予測を発表した。2020年度見込みの1兆7986億円から微減となり、太陽光発電が2020年度比6割弱まで市場規模が縮小する一方、風力発電が洋上風力の導入本格化により同4倍以上に拡大するという。 再生可能エネルギー発電システム市場 (出所:富士経済) 太陽光発電は、2014年度に導入ピークを迎え、以降は縮小が続いている。2020年度は、新型コロナウイルスの影響を受け、前年度比11.8%減の1兆7651億円の見込みで、再エネ全体の約75%を占める。2025年度までに固定価格買取制度(FIT)事業認定案件の導入がほぼなくなり年間導入量が減少するが、以降は非FITやフィード・イン・プレミアム(FIP)による導入が進み、市場の縮小は底を打つと見ている。 再生可能エネルギー発電システムの発電量 (出所:富士経済) 風力発電は、設備認定を受けた案件の稼働が本格化し、2020年度は前年度比1.2%増の1781億円の見込み。大型陸上風力は、環境アセスメント手続きが終了した案件は2022年度までの竣工が確実となり、事業認定取得済み案件が2025年度まで市場を牽引する。洋上風力は、着工が2022年度から2023年度にかけて本格的に立ち上がり、2025年度以降は洋上風力が市場を牽引していくと見られる。 太陽光・風力の累積導入量 (出所:富士経済) 再エネ発電の累計導入容量は、2020年度が8571万kW(85.71GW)の見込み。2035年度は、2020年度見込み比2.2倍の1億9199万kW(191.99GW)と予測する。太陽光は、リードタイムが短く費用対効果が高いことから導入量が急増し、2020年度が6570万kW(65.70GW)の見込み。2035年度は同2.1倍の1億4100万kW(141.00GW)と予測し、構成比は70%を超えると見られる。風力は、2020年度が469万kW(4.69GW)の見込み。開発に時間がかかるが大型風力や洋上風力の導入が本格化することで、2035年度は同5.8倍の2741万kW(27.41GW)と予測する。 再エネ発電量は、2020年度が1728億kWhの見込み。2030年度は3019億kWh、2035年度には3795億kWhとなり、国内総発電量約1兆kWhの約40%を占める。太陽光は、2020年度の806億kWhから2035年度には1730億kWhまで増加し、再エネ発電量全体の45~55%の構成比を維持する見込み。風力は、2020年度の109億kWhから2035年度には445億kWhまで拡大し、再エネ発電量全体の2割近くを占めるという。
続きを読む一般社団法人・低炭素投資促進機構は6月18日、太陽光発電(250kW以上の高圧・特別高圧連系案件)を対象にした、固定価格買取制度(FIT)による第8回入札(令和3年度第1回)の結果を公表した。 札を入れた容量は募集容量を上回り、最高落札価格は上限価格を下回るなど、入札回数を増やして1回の募集容量を減らした効果が表れた。 今回の入札は事前に上限価格を公表し、前回の11.50円/kWhから0.50円下げ、11.00円/kWhと設定していた。また、募集容量(入札量)は208MWとしていた。 落札されたのは135件・約208MWで、最低落札価格は10.00円/kWh、最高落札価格は10.98円/kWh、加重平均落札価格は10.82円/kWhだった。最低価格は前回の10.48円/kWhから0.48円、加重平均落札価格は前回の11.20円/kWhから0.38円下がった。 今回の入札での募集容量は208MWで、札を入れたのは185件・合計出力約248.83MWで、募集容量を上回った。その結果、落札されたのは、より低い価格を入れた札から208MWに達した135件となり、最高落札価格は、上限価格を下回る10.98円となった。その意味では、前回と違い最高落札価格が上限価格に張り付くことなく、本来の競争入札の効果が出た。 2021年度の入札は、対象を2020年度と同様、250kW以上としたが、入札回数を2回から4回に増やすとともに入札上限価格を事前に公表した。2020年度入札の上限価格は事前非公表で、上期(第6回)12円/kWh、下期(第7回)11.5円/kWhだったが、2021年度の1回目(第8回)は11円/kWh、2回目(第9回)は10.75円/kWh、3回目(第10回)は10.50円/kWh、4回目(第11回)は10.25円/と公表した。 加えて、募集容量を減らすことで、入札効果を高めることを狙った。2020年度は上期・下期各750MWで合計1500MWだったが、2021年度は1回の募集量を208MW、4回合計で832MWに減らした。 今回の入札で、参加資格の審査に提出された案件は231件・329.53MWだったが、参加資格を得たのは218件・310.93MWに留まった。そのうち実際に入札に参加したのは185件・248.83MWとさらに減った。入札参加に意欲を持っていたものの、連系協議の進展遅れなど何らかの理由により、入札を見送った件数が相当数に上ることが伺える。 今年度は、フィード・イン・プレミアム(FIP)開始を来年度に控え、250kW以上の太陽光がFITによる売電事業で認定が取得できる最後の年度になる。そのため駆け込み認定が予想される。今回、入札参加資格の審査に300MW以上が応募したことを見ると、新規開発が活発化していることが伺える。 今回の落札結果を、規模別に見ると、2MW以上の特別高圧案件は3件(49.99MW・10.76円/kWh、26.75MW・10.90円/kWh、4.0MW・10.40円/kWh)、1MW以上2MW未満のメガソーラーが54件、250kW以上1MW未満のミドルソーラーが78件だった。前回入札では特高案件が1件もなかったことを考えると大規模案件の開発にも復調の兆しが見える。...
続きを読む大阪府と大阪市は6月11日、太陽光パネルと蓄電池の共同購入事業「グループパワーチョイス」について、市場価格に比べ、太陽光パネルのみは約30%オフ、太陽光パネルと蓄電池のセットは約23%オフ、蓄電池のみは約22%オフとなる購入プランが決定したと発表した。 購入希望者の参加登録件数は5月31日時点で900件を超えているという。参加登録の受付期間は7月19日まで。なお、市場価格は支援事業者が実施した市場調査結果をもとに算定しており、太陽光パネルは18枚(出力4.68kW)設置の場合、蓄電池はハイブリッド型蓄電池(屋内外兼用容量7.04kWh)の場合。蓄電池のみのプランでは単機能蓄電池(屋内用容量6.5kWh、屋外用容量9.8kWh)も選べる。 価格例は以下の通り。 (出所:大阪府) 同府・市が共同で設置する「おおさかスマートエネルギーセンター」では4月から、太陽光パネルと蓄電池のさらなる普及拡大を図るため、府と協定を締結した支援事業者が府内全域から購入希望者を募り、設置をサポートする「共同購入支援事業」を実施している。今回、支援事業者が入札により販売施工事業者を選定した。 同事業のポイントとして、下記4点を示している。 · みんなでまとめて購入するから「お得」になる。 · 登録・購入・施工まで、トータルサポートする。事前に製品や工事価格、保証内容を確認できる。 · 基準をクリアした販売施工事業者が施工する。 · コロナ禍における光熱費削減対策や災害時の停電対策になる。
続きを読む本件の概要 近年、太陽電池発電設備の増加や設置形態が多様化していること等を踏まえ、民間規格や認証制度と柔軟かつ迅速に連携できるよう、太陽電池発電設備に特化した新たな技術基準『発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令』(以下「省令」という。)を制定しました。 太陽電池発電所は、太陽電池モジュールとそれを支持する工作物、昇圧変圧器、遮断器、電路等から構成されますが、本省令については、太陽電池モジュールを支持する工作物(以下、「支持物」という。)および地盤に関する技術基準を定めたものであり、ここでの支持物とは、架台及び基礎の部分を示します。 本省令では、人体に危害を及ぼし、物件に損傷を与えるおそれがないように施設することを規定するほか、公害の発生や土砂流出等の防止を規定するとともに、太陽電池モジュールを支持する工作物の構造等について、各種荷重に対して安定であることや使用する材料の品質など、満たすべき技術的要件を規定しています。 また、省令で定める技術的内容をできるだけ具体的に示した『発電用太陽電池設備の技術基準の解釈』も制定しました。 なお、電気設備に関しては「電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52 号)」に規定されています。
続きを読む経済産業省は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電気を調達しやすくするため、新たに専用の取引市場をつくる。再生エネで発電したことの「証明書」を公的機関が発行し、それを一般の企業が買えるようになる。脱炭素の流れが強まるなか、企業にとっては再生エネの電気で事業をしていることをアピールしやすくなる。 政府は2050年の温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げる。目標を明記した改正地球温暖化対策推進法も成立した。政府は実現に向け、太陽光発電の用地確保など様々な対策を検討している。新たな市場の創設もその一環だ。 再生エネの電気は固定価格買い取り制度(FIT)に基づき、大手電力会社が発電事業者から買い取っている。費用は電気料金に上乗せされている。火力や原子力などの電気と一緒に送られ、使う際には発電方式はわからない。 環境面で価値が高い再生エネを区別するための証明書を、金融機関などでつくる「低炭素投資促進機構」が発行し、市場で売り出す。証明書を買えば、その分だけ再生エネの電気を利用したことになる。証明書の売却収入は再生エネ買い取り費用の一部に回され、電気料金への上乗せ額の軽減につながる。 いまも再生エネの証明書を扱う市場はあるが、化石燃料を使わない原発などの電気と同じように扱われている。調達できるのは電気の小売事業者に限られ、一般企業は小売事業者から証明書と電気を買っている。証明書は割高で、十分に活用されていなかった。 経産省は新たに再生エネの証明書だけを扱う「再エネ価値取引市場」を11月にもつくり、試験運用を始める。一般企業も証明書を買えるようにし、価格も大幅に安くして市場を活性化したい考えだ。再生エネがつくられた「産地」などを明記する仕組みも整える。 証明書が安くなれば、電気の小売事業者も調達しやすくなり、いまはごく一部にとどまる再生エネ100%の料金プランが増える可能性もある。 一般企業で再エネの需要急増 再生エネの需要は一般企業でも急速に高まる。 米アップルは昨年7月、サプライチェーン(部品の供給網)全体で30年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を発表した。iPhoneなどの部品をつくる取引先にも、電力をすべて再生エネでまかなうように求める。 事業で使う電力を再生エネ100%にする国際的な取り組み「RE100」には、グーグルやマイクロソフトなど300社以上が名を連ねる。こうした動きは広がっており国内企業は対応を迫られる。 今年2月に国の有識者会議に出席したソニーグループ幹部は、日本での再生エネの調達コストは海外の10倍以上だとして、「合理的なコストで十分な再生エネ電力を調達できることは、製造業の国際競争力という観点で重要だ」と訴えた。(長崎潤一郎、新田哲史)...
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